「また怒られてしまった…悔しくて涙が出る」「頭が真っ白になってパニックになり、うまく言い返せない」──ADHDの特性を持つ大人の中には、叱責される場面でこのような経験をする人が少なくありません。
決してあなたが弱いわけでも、子どもじみているわけでもないのです。それはADHD特有の脳の働きと心の反応によるもので、多くの人が同じ悩みを抱えています。
この記事では、職場・家庭・恋愛という場面別に「なぜ怒られると泣いたりパニックになるのか」を解説し、具体的な対処法を紹介します。つらい気持ちに寄り添い、乗り越えるヒントをお届けします。

- シバッタマン
- 精神障害者保健福祉手帳 保持者
- npo法人発達障がい者を支援する会(チームシャイニー)
- 40歳で会社を退職し就労移行支援へ
- 氏名:柴田義彦
- 退職代行&就労移行支援、ITの執筆
- 妻と7歳の子供がいて住宅ローン・教育費に必死
- うつ病で休職経験多数
- 経歴・連絡先情報はプロフィールに表示
ADHDのある大人が職場で怒られると泣いたりパニックになる理由
ADHDの特性を持つ大人が職場で叱責された際に涙が出たりパニックになったりするのは、特有の脳の働きと心の反応によるものです。決して本人の弱さが原因ではありません。
職場での叱責が必要以上に強いストレスとなる主な理由は以下の通りです。
強いショックによる思考停止:
些細な指摘や注意であっても、本人にとっては「攻撃された」「強く怒られた!」という強い衝撃として受け取られ、瞬時に頭が真っ白になることがあります。これは、過去の失敗経験の積み重ねから「注意される=自分はダメだ」という回路が強固になっており、指摘そのものに過敏になっているためです。
脳が強いストレスを感じると、情報を一時的に処理するワーキングメモリの機能がパンクしてしまい、言葉を理解したり、考えをまとめたりすることが困難になります。これは意図的な無視や反抗ではなく、脳が自己防衛のために思考をシャットダウンさせる「フリーズ」という生理的な反応に近い状態です。
衝動性とブレーキの葛藤
ADHDの特性である衝動性は、「すぐに何かを言わなければ」という焦りを生みます。しかし同時に、社会的な経験から「ここで感情的に言い返してはいけない」「謝罪すべきだ」という理性のブレーキも働きます。
「弁明したい」「でも反論は状況を悪化させる」「謝りたいけど、何をどう言えばいいか分からない」といった相反する思考が頭の中を駆け巡り、脳内が交通渋滞を起こします。
この板挟みの結果、何も言葉が出てこなくなり、ただ黙り込んでしまうのです。この沈黙が、相手に「反省していない」と誤解を与え、さらに状況を悪化させてしまうことも少なくありません。
自己否定と過去の失敗のフラッシュバック:
ADHDのある人は、幼少期から叱責される経験が多いため、自己肯定感が育ちにくい傾向があります。
そのため、職場で注意を受けると、その一つの出来事として捉えることができず、「やっぱり自分は何をやってもダメなんだ」「自分は社会に適合できない人間だ」という根源的な自己否定の感情に直結してしまいます。
さらに、その瞬間に、過去の様々な失敗や怒られた記憶が脈絡なく次々と思い出される「フラッシュバック」が起こることがあります。現在のミスと過去の無数の失敗が結びつき、耐え難いほどの罪悪感や無力感に襲われ、自己嫌悪の渦に飲み込まれてしまうのです。
拒絶過敏症(RSD)による過剰な恐怖
ADHDの当事者の多くが抱える「拒絶過敏症(Rejection Sensitive Dysphoria)」は、他者からの批判や拒絶、あるいはそう受け取れる状況に対して、極度の精神的な苦痛を感じる特性です。
単なる業務上の指摘であっても、本人にとっては自分の人格や存在そのものを否定されたかのような、耐え難い痛みとして感じられます。その結果、「もうこの職場にはいられないかもしれない」「みんなから嫌われた」「自分は見捨てられるんだ」といった破局的な思考に陥り、将来への強い不安からパニックや涙が止まらなくなってしまうのです。
ADHD怒られると泣いたりパニックになる対処は
職場での叱責が必要以上に強いストレスとなる主な理由は以下の通りです。
その場で一呼吸おいてクールダウンする
怒られた瞬間は、感情が爆発する直前の状態です。「すみません、少し整理させてください」と一言断って、意識的に時間を作りましょう。ゆっくりと鼻から息を吸い、口から吐き出す深呼吸を数回繰り返すだけでも、高ぶった神経を落ち着かせる効果があります。
その場で軽く肩を回したり、足に力を入れて緩めたりするのも、固まった体をほぐし、意識を「今、ここ」の自分に戻す助けになります。この数秒のクールダウンが、パニックの連鎖を断ち切る最初のステップです。
メモを取って頭の中を整理する
頭が真っ白になりそうなときは、「忘れないようにメモを取ってもよろしいでしょうか?」と許可を得て、指摘された内容を書き留めましょう。相手の言葉をキーワードだけでも書き出すことで、情報を頭の中だけで処理する負担が減り、客観的に状況を捉えやすくなります。
これは「真摯に話を聞いている」という姿勢を示すことにもつながり、相手の怒りを和らげる効果も期待できます。焦って反論や言い訳を考えるのではなく、まずは事実を正確に受け止めることに集中しましょう。
適切にリアクションして誤解を防ぐ
パニックで黙り込んでしまうと、相手からは「反省していない」「無視している」と誤解され、さらに叱責がエスカレートする恐れがあります。「はい」「承知しました」「申し訳ありません」といった短い言葉でも構いません。
まずは相手の話を受け止めているというサインを送ることが重要です。もし内容の確認が必要なら、「〇〇という理解でよろしいでしょうか?」と質問する形で返すのも有効です。これにより、対話が一方的な叱責で終わるのを防ぎます。
後で冷静に話し合う時間を提案する:
どうしてもその場で感情的に対処してしまいそうな時や、頭が整理できずうまく説明できない時は、無理に対応しようとせず、仕切り直しを提案しましょう。
「申し訳ありません、今すぐ的確にお答えできないので、本日中に改めてご報告させていただいてもよろしいでしょうか?」などと伝え、時間を確保します。一度その場を離れることで、落ち着いて事実関係を整理し、自分の考えをまとめることができます。後からメールや文書で報告すれば、感情的にならずに誤解を解くことも可能です。
職場の環境調整を検討する
もし特定の上司や同僚からの叱責で毎回パニックになるのであれば、可能であれば事前に自分の特性を伝えておくのも一つの手です。「強い口調で言われると、頭が真っ白になってしまい、内容が頭に入りにくくなる傾向があります。
大変恐縮ですが、もう少し落ち着いたトーンでご指導いただけると大変助かります」といった形で、丁寧にお願いしてみましょう。それが難しい場合は、人事部や産業医、信頼できる先輩などに相談し、第三者から伝えてもらったり、配置転換を検討してもらったりする方法もあります。
メンタル面のケアと専門家の支援:
叱責で受けた心のダメージは、放置せずにケアすることが大切です。仕事終わりに好きな音楽を聴いたり、ノートに悔しかった気持ちを書き出したりして、ストレスを発散させましょう。
問題が深刻な場合は、カウンセリングや心療内科で専門家のサポートを受けることをお勧めします。専門家は、認知行動療法などを通じて、否定的な考え方の癖を修正する手助けをしてくれます。また、発達障害者支援センターや就労移行支援事業所などでは、職場でのコミュニケーションの取り方や、上司への特性の伝え方など、具体的なアドバイスをもらうこともできます。
自己肯定感を高め小さな成功体験を積む
叱責されやすい状況から抜け出すためには、根本的な自己肯定感の回復が不可欠です。
日々の業務の中で、自分の「できたこと」や「得意なこと」を意識的に見つけ、手帳やアプリに記録していきましょう。どんなに小さな成功でも、「自分はこれができた」と認識することが自信につながります。
自分の強みを生かせる業務に積極的に取り組むのも良いでしょう。自己肯定感が高まると、他者からの指摘を「人格否定」ではなく「成長のためのフィードバック」として前向きに捉える余裕が生まれ、過剰に傷つくことが減っていきます。
対処方法⑤:自己肯定感を高める
は自己肯定感を高めることは、発達障害がある人々が怒られたときに泣く傾向を持つ問題に対する対処法の一つとなります。
自己肯定感が高いと、自分自身の価値を他人の意見や評価に左右されずに認識することができます。
これは、他人からの批判や否定的なフィードバックを個人攻撃ではなく、自己改善のためのフィードバックとして捉える能力を向上させます。

私は発達障害があるため、生活の多くの場面で苦手なことが多かったのですが、IT分野には強みがあることに気づきました。
そこで、ITスキルを伸ばすことに注力することで、自己肯定感を高めることができました。
- 苦手なことは苦手なままでも、得意なことを見つけて伸ばす
- ITは私の得意分野だったので、それを活かす
- できることに集中することで、自信と達成感が得られる
- 少しずつスキルを磨くことで、自己肯定感が高まる
発達障害の場合、一朝一夕に自己肯定感が高まるわけではありませんが、小さな成功体験を重ねることで、確実に前向きな変化が生まれると思います。
得意分野を見つけて伸ばすことをおすすめします。
【発達障害 怒られると泣く】パニックで泣く大人を防ぐ相談先は?

①:医者に相談
仕事によるうつ病は、退職や転職によって改善されることもしばしばありますが、職場をそう簡単に辞められないという方は多いのではないでしょうか。
辞められないという使命感やプレッシャーが、さらにうつを進行させる原因にもつながるため、早い段階で気持ちを軽くすることが大切です。
自己判断でうつ状態、あるいはうつ病と決めつけるのは良くないことです。

休職を検討している人は、何らかの精神的ストレスを抱えていることがほとんどなので、早めに心療内科や精神科に相談しましょう。自分ではさほど問題がないように感じていても、医師からすると休職の必要性が大いにある場合もあります。
まずは産業医や医師など専門家の意見を聞いてみましょう。
②:支援機関に相談
ADHDに伴う悩みをお持ちの方は、まずは「医師や支援機関に相談」しましょう。
かかりつけ医は、あなたがADHDの特性とうまく付き合っていく上で、大切なパートナーです。
定期的に通院して悩みを共有すれば、あなたに合ったアドバイスを得られるでしょう。
特に、前に述べた「二次障害」をお持ちの方は、まずは医師に相談して、治療を進めるようにしてください。
また、公・民を問わず、発達障害を含む障害をお持ちの方をサポートしている機関は複数あります。
具体的には、以下の支援機関が挙げられます(各項目のリンクをクリックすると、全国の一覧を紹介するサイトが新しいタブで開くます)。
「就労移行支援事業所」のように、仕事の悩みにしっかり寄り添って解決策を提示してくれる機関もあります。
もし、どの支援機関が適切か分からないという場合は、お住いの自治体の障害福祉課が窓口になりますので、お悩みの方は一度、問い合わせてみるとよいでしょう。
④:カウンセラーに相談
発達障害で怒られると泣くと悩んでいるあなたに、エキサイトお悩み相談室がおすすめです。
エキサイトお悩み相談室では、経験豊富なカウンセラーがあなたの悩みを聞き、解決策をアドバイスします。怒られると泣くと悩んでいるあなたを、エキサイトお悩み相談室がサポートします
まとめ:ADHDのある大人が怒られると泣いたりパニックになってしまう理由とは?シチュエーション別対処法
叱られたときに涙が出たりパニックになったりするのは、あなたの弱さではなく、ADHDの脳の特性に根ざした反応です。自分を責める必要はまったくありません。
大切なのは、一人で抱え込まず、周囲の理解と適切なサポートを得ることです。この記事で紹介した対処法を一つずつ試しながら、うまくいかなくても「次はこうしてみよう」と考えるだけで、確実な前進につながります。
あなたの悩みを分かってくれる人は必ずいます。専門家や支援機関、同じ経験を持つ仲間たちの力を借りながら、自分をいたわり、少しでも心穏やかな日々を過ごせるよう願っています。
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